重度訪問介護は、重度の障害者が自宅で日常生活を送ることができるように、食事、入浴、排せつなどの介護や洗濯、掃除などの支援を行うサービスのことです。
重度訪問介護は常に介護を必要とする重度の肢体不自由者、重度の行動障害がある知的障害者、精神障害者に身体介護、家事援助、移動支援などを総合的に行います。
この記事では、重度訪問介護の法律での定義、利用条件、費用など、気になる事について詳しく解説します。重度訪問介護を利用したいと思っている方は、参考にしてみてくださいね。
重度訪問介護とは
重度訪問介護の法律定義
重度訪問介護は障害者総合支援法に基づくもので、
「重度の肢体不自由者又は重度の知的障害もしくは精神障害により行動上著しい困難を有する障害者であって、常時介護を要するものにつき、居宅において入浴、排せつ及び食事等の介護、
調理、洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の生活全般にわたる援助並びに外出時における移動中の介護を総合的に行うとともに、病院等に入院または入所している障害者に対して意思疎通の支援その他の支援を行う」と規定されています。
重度訪問介護は主に2種類
重度訪問介護は、居宅におけるサービスと、外出時に行うサービスの２種類に分けられます。
①居宅におけるサービス
・身体介護（食事、入浴、排せつなど）
・家事援助（調理、洗濯、掃除など）
・生活等に関する相談、助言
・その他の相談
②外出時に行うサービス
・移動中の介護
・重度訪問介護に上限はない
重度訪問介護の制度には上限はなく、市町村からの認定があれば必要な方は24時間の介護も受けることができます。
24時間の連続介護を交代制で行うサービスもある
24時間の連続介護を、ヘルパーが3交代で8時間ずつ利用者を見守り必要な介護を行うサービスがあります。
入浴、食事、排せつなどの介護や家事援助の他、補水、痰の吸引も受けることができます。
重度訪問介護は、連続して利用することが前提となっているため、短時間ずつに分けて使うことは原則としてできません。
短時間の介護で対応できる利用者は、居宅介護の身体介護や家事援助などのサービスを受けることになっています。
具体的には、
・通院する際の移動介助
・選挙の投票の介助
・役所などの行政機関における公的な手続き
・障害福祉サービス事業者への相談や手続きの依頼
などがあります。
重度訪問介護の利用対象者の条件
重度訪問介護を利用できる対象者の条件は、以下のいずれかに当てはまる方です。
・原則として18歳以上の重度身体不自由者、重度行動障害のある知的障害者、精神障害者
・障害支援区分「４以上」で、条件を満たす肢体不自由や行動障害のある方
・児童相談所長が必要と認めた15歳以上の障害児
実際に重度訪問介護を利用している方には、
脳性麻痺、脊髄損傷によって寝たきり状態の患者
難病患者（筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症「ALS」）
重度心身障害
強度行動障害
など多くの重度障害の方がいます。
こんな方におすすめ！重度訪問介護のメリット
重度訪問介護では、長時間の介護見守りを行うサービスが受けられるため、重度の障害がある方にとって様々なメリットがあります。
常に見守ってくれるため、利用者が安心してすごすことができる
重度訪問介護は、利用者ができることを見守り必要なときに援助してくれるため、利用者や家族が安心した生活を送ることができます。
医療機関へ入院した場合でも、引き続きサービスを利用できる場合がある
障害者支援区分6程度で、日常的に重度訪問介護を利用している最重度の障害のある方が入院した場合、重度訪問介護サービスを継続して受けることができます。
重度の障害のある方が入院した場合、強い恐怖心からパニックを起こしたり、特殊な介護を入院中受けられないなどの心配があります。
入院中に、引き続き利用者の状態を把握しているヘルパーがサービスを行うことで、利用者や家屋の不安感をやわらげることができ、安心した生活環境のもと治療を受けられるのです。
利用者や家族の肉体的精神的負担を軽減できる
重度の障害をもつ利用者や家族にとって、日ごろの介護は負担が大きく介護疲れにおちいってしまうことが少なくありません。
重度訪問介護サービスを受けることによって、本人家族双方が安心して生活を送ることができます。
個別対応のサービスを受けることができる
重度訪問介護は、基本的にヘルパーが1人で訪問し、利用者や家族が望んだ個別サービスを受けることができます。
利用者や家族がヘルパーと相談しやすく、納得するサービスを調整できるといえるでしょう。
重度訪問介護で受けられないサービス
重度訪問介護は、利用者本人の介護を行いますが、本人以外の食事の準備や家事などを行うことはできません。
その他、一般的な掃除の範囲を超えた大掃除や、草木の手入れなども行えません。
重度訪問介護は、利用者本人に身体介護、家事援助、移動支援のサービスを包括的に行うものであるということに注意してください。
重度訪問介護で気になること
実際に重度訪問介護サービスを利用する上で、気になる点を解説します。
必要な費用は？
重度訪問介護を利用した場合の料金は、利用時間によって異なります。
また、移動介助の加算や、時間帯加算（早朝、夜間、深夜でのサービス提供を受けた場合）、2人のヘルパーが必要な場合の加算やその他交通費などがかかる場合があります。
障害者福祉サービスでの重度訪問介護は、原則として利用者が1割を負担し、残りの9割は市町村が負担します。
世帯の所得に応じて負担の上限度が設定されており、それ以上の負担がかかることはありません。
ひと月の利用者の負担は、低所得者は無料～一定以上の所得がある場合は37200円までと設定されています。
どんなスタッフがいる？
重度訪問介護を行う事業所は、社会福祉協議会などの公的機関や、社会福祉法人、一般企業、NPO法人などさまざまです。
訪問介護事業所、ヘルパーステーションといった名称のことが多いです。
重度訪問介護を行う事業所には
・訪問介護員（居宅介護に従事可能な介護福祉士、介護職員初任者研修などの資格所有者、重度訪問介護従事者養成研修修了者など）
・サービス提供責任者
・常勤管理者
がいます。それぞれ、事業規模によって配置人数が規定されています。
重度訪問介護は何歳まで受けることができる？
重度訪問介護のサービスは、何歳までしか利用できないといったような制限はありません。
しかし、65歳以上の場合で利用したい場合は、基本的に介護保険制度でのサービスを受けることとなっています。
引き続き障害福祉のサービスとして重度訪問介護を受けたい場合は、市町村による判断を受けることになります。
また、重度訪問介護サービスを受ける場合は、1年ごとの更新手続きが必要です。
重度訪問介護はどうやって利用したらいい？
重度訪問介護を利用したい場合の手続きについてご紹介します。
障害福祉サービスには、「介護給付」「訓練給付」「地域生活支援偉業」の３つがあり、重度訪問介護を受けるためには「介護給付」を利用する手続きを行っていきます。
「介護給付」を利用するための手続きの方法
「介護給付」を利用するためには以下の手続きを行う必要があります。手続き完了には最大2か月程度かかる場合がありますので、早め早めに対応していった方がよいでしょう。
①相談、申請をする
最寄りの市町村の障害サービス窓口や相談支援事業所に相談し、サービスを受ける申請を行います。
②障害程度区分の判定を受ける
市町村から現在の生活や障害、利用している福祉サービスについて調査があります。この調査結果から、審査・判定が行われ、福祉サービスがどのくらい必要なのか示した障害程度区分が決定されます。
③認定結果通知
認定結果が自宅に郵送されます。
④重度訪問介護利用開始
重度訪問介護が必要と認定された場合、相談支援事業所と共にサービス等利用計画書を作成し重度訪問介護サービスを開始できるようになります。
重度訪問介護の事業所の探し方
重度訪問介護事業所を探すには、お住まいの市町村の障害福祉課の窓口に、重度訪問介護を受けたいことを相談するとよいでしょう。
事業所一覧やパンフレットを利用して、受けたいサービスについて教えてくれたりします。
また、障害福祉サービスの情報サイトから検索するなどして、直接事業所に問い合わせをする方法もあります。
重度訪問介護事業所を選ぶポイント
重度訪問介護事業所を選ぶ際は、利用者の自宅から近い場所の事業所を探すことがおすすめです。近い方が、困ったときにすぐかけつけてくれたり地域の障害福祉サービスについての情報について詳しい場合があるからです。
また、スタッフが何人いる事業所なのか、担当ヘルパーが不在の時に対応できるスタッフがいるのかも確認しておくと安心です。
重度障害者のケアを行う事業所ですので、専門的にどのようなサービスが受けられるのか、また事業所の雰囲気やスタッフの関係はどうなのか、など実際に事業所を訪問して確認するとよいでしょう。
さらに、事業所にある他の社会福祉サービスに何があるかも確認しておくとよいでしょう。
福祉サービスが充実している事業所であれば、他に困ったことがあった場合でも適したサービスを紹介してくれます。
今回ご紹介した情報を参考に、利用者と家族が充実した生活を送ることができる支援をしてくれる重度訪問介護サービスを選んでいただければ幸いです。