世界の障害福祉は?障がい者への考え方や制度について解説

トピックス 障がい者の支援や制度

日本で障害福祉に携わっている人の中には、世界における他の国々ではどのような考え方や制度に基づいて障害福祉が行われているのか知りたい人も多いのではないでしょうか。

この記事では世界の障害福祉のあり方から制度まで、日本との違いも踏まえて詳しく解説します。

世界における障がい者の現状


国際連合広報センターによると、2022年5月現在世界の障がい者数は10億人で、世界の人口における15%を占め、障がい者のうちの80%は発展途上国に住んでいるのです。

2006年12月13日に第61回国連総会で採択され、2014年1月20日に日本国政府が批准した「障害者の権利に関する条約」では、国際人権法に基づいて人権の観点から障がい者の尊厳を守り合理的配慮をすることが定められました。

それまでのリハビリや福祉の観点から定められた法律とは異なり、障がい者の視点から作られた条約であることから、2022年4月現在では185か国が批准し、障がい者への差別を防止し自立を尊重するための活動を続けています。

参考: 国際連合広報センター「障害を持つ人々」

世界における障害福祉への取り組み事例


世界における障害福祉への取り組み事例を3つご紹介します。

SDGs3「全ての人に健康と福祉を」


SDGsとは2030年までに誰一人取り残さずに、持続可能でよりよい社会を目指すための国際的な目標ですが、17個あるゴールのうちゴール3が「全ての人に健康と福祉を」と定められています。

これは全ての人々が生涯に渡って健康的な生活を営めるようになることを目指し、妊産婦や幼児の健康、感染症の制圧、生活習慣病の防止などが求められているのです。

また障がい者にとって特に大切なのがユニバーサル・ヘルス・カバレッジで、これは全ての人々が支払い可能な費用で医療・保健サービスや医薬品にアクセスできる状態になることを指します。

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジは2012年12月12日に行われた国連総会で国際社会共通の目標とすることが決まり、世界中で達成のための取り組みが続けられているのです。

参考:外務省「SDGsとは?」
参考:国際開発センターSDGs室「SDGsの各ゴールについて」

デンマークにおける障がい者福祉


内閣府では障がい者施策における国際比較調査や世論調査、意識調査などを行い、その結果をホームページに掲載しています。

その中で2018年に行われた「平成30年度障害を理由とする差別の解消の推進に関する国外及び国内地域における取り組み状況の実態調査」においてはキューバ、ノルウェー、トルコ、サウジアラビア、スペイン、ニジェール、ベルギー、デンマークの8か国を調査対象としています。

この中で日本より早く2009年7月に障害者権利条約を批准したデンマークでは、すべての人の平等を法の基本原則とし公式には障がいについての定義がされていないのが特徴的で、国連の定義に従って障がい者の参加を妨げる障害物に着目し、環境整備を重視した取り組みが行われているのです。

デンマークにおける具体的な障がい福祉政策には次の4つの原則があります。
① 機会均等
② 連帯
③ 部門責任
④ 補償

このうち部門責任とは商品やサービス、活動に責任のある公的機関が障がい者にも利用可能にする責任があるということで、補償とは障がいが及ぼす影響を制限・相殺するための最大限可能な補償を、社会が提供するということを指すのです。

障がい者福祉を管轄するのは社交省ですが、部門責任により全ての省庁が障がい者への対応に責任があるとされています。

参考:内閣府「平成30年度障害を理由とする差別の解消の推進に関する国外及び国内地域における取り組み状況の実態調査」

ドイツにおける障がい者福祉


ドイツの福祉政策はできるだけ国家の介入を避けるという考え方に基づいているため、介護保険制度に公費は使用されず、公費で行われるのは障がい者福祉や生活保護などに限られているのが特徴的だと言えるでしょう。

この中で障がい者の雇用政策においては、ドイツでは従業員20人以上の企業ごとに全従業員の5%に該当する数の障がい者を雇用しなければならないと定められており、2021年現在日本の障がい者の法定雇用率が2.3%であることと比較すると大きな差があることがわかります。

しかも障がい者を雇用しない使用者は10,000€以下の罰金が課されるため、罰則金のない日本と比較するとはるかに厳しい制度が適用されているのです。

重度障がい者にも就労とそれに付随するケアを提供したり、障がい者作業所でも一般企業に就労するための職業訓練を行ったりと、ドイツでは障がい者が地域社会で生きていくためのサポートに積極的に取り組んでいると言えるでしょう。

参考:厚生労働省「フランス及びドイツの障害者雇用促進制度について」
参考:厚生労働省「令和3年障害者雇用状況の集計結果」

まとめ


世界における障害福祉はSDGsのゴール3への取り組みに始まり、福祉先進国とされるデンマークやドイツにおいてもそれぞれのお国柄に合った方法で障がい者が地域で生きていけるよう積極的な支援を行っていることがわかりました。

国内の取り組み事例にとどまらず海外の事例も参考にし、よりよい障がい者へのケアを模索してみてください。