障がいを持つ家族も含めて地域の行事などには積極的に参加したいと思っているので、福祉バスの利用を考えているけれど手続きの方法がよくわからないと悩んでいる人はいませんか?
この記事では社会生活上必要な外出や社会参加のための外出をサポートする移動支援について詳しく解説します。
移動支援とは?
移動支援とは障害者総合支援法に基づいて行う地域生活支援事業の1つで、屋外での移動が困難な障がい者等に対し、地域における自立生活および社会参加を促すことを目的として、外出のための支援を行うサービスです。
サービスは3種類あるので、表にまとめてみました。
サービスの種類 | 概要 |
---|---|
個別支援型 | ・マンツーマンによる支援 |
グループ支援型 | ・複数の対象者への同時支援 ・屋外でのグループワーク、同じ目的地・同じイベントに複数の人が同時参加する時の支援 |
車両移送型 | ・福祉バスなど車両の巡回による送迎支援 ・公共施設、駅、福祉センターなど対象者の利便性を考慮し、経路を定めた運行、各種行事の参加のための運行などの必要に応じた支援 |
これらのサービスは市町村や都道府県が実施主体となって行われるため、サービスの対象者や実施者、料金が異なるのが特徴的であると言えるでしょう。
例えば移動支援を行う地方自治体に応じて聴覚障がいのある人は対象外とされていたり、移動支援を行うために必要な資格がガイドヘルパー、介護職員初任者研修修了者、地方自治体の定める研修受講者など異なる場合があったりするということです。
参考:厚生労働省「地域生活支援事業の実施について」
移動支援の利用実態について
2020年3月にPwCコンサルティング合同会社が「地域生活支援事業を効果的に実施するための実態の把握に関する調査研究 事業報告書」において地方自治体により対象者、実施者、料金の異なる移動支援サービスの利用実態について調査・報告を行いました。
この結果を基に、移動支援の現状について見ていきましょう。
利用者の実態
2018年に32の事業所を対象に調べた1事業所あたりの障がいの種類別の年間平均利用者数は次の通りです。
手帳所持者 | 手帳非所持者 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
身体障がい者 | 知的障がい者 | 精神障がい者 | 身体障がい者 | 知的障がい者 | 精神障がい者 | 難病 | 発達障がい | 高次脳機能障がい |
10.5人 | 19.3人 | 2.9人 | 3.3人 | 1.7人 | 0.7人 | 0.1人 | 1.1人 | 0.0人 |
障がい者手帳を所持している人の方が、移動支援を多く活用していることがわかります。
また2018年に160の地方自治体を対象に調べた18才未満の障害支援区分別の年間平均利用者数は次の通りです。
未認定 | 該当なし | 区分1 | 区分2 | 区分3 | |
---|---|---|---|---|---|
年間平均利用者数 | 15.4人 | 0.8人 | 0.2人 | 1.2人 | 4.3人 |
18才未満では未認定の人と、認定を受けた人では区分3の人が多く移動支援を活用しています。
同じく363の地方自治体を対象に調べた18才以上の障害支援区分別の年間平均利用者数は次の通りです。
未認定 | 該当なし | 区分1 | 区分2 | 区分3 | 区分4 | 区分5 | 区分6 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
年間平均利用者数 | 13.8人 | 6.7人 | 1.1人 | 11.0人 | 14.4人 | 15.3人 | 14.9人 | 15.9人 |
18才以上では区分1以外の利用者数が少しずつ増加し、未認定の人も多く移動支援を活用しているのがうかがえます。
事業所の実態
移動支援を行っている事業所ごとのサービス提供日数は、351 日以上365 日以下の事業所が 457か所、251 日以上 300 日以下の事業所が297か所、201 日以上250 日以下の事業所が 206か所という結果でした。
またサービス提供時間は9時間以上10時間未満のサービスを提供している事業所が 430 か所、8時間以上9時間未満の事業所が260か所、10 時間以上 11 時間未満の事業所が135 か所という結果でした。
このことから年中無休で比較的長時間サービスを提供している事業所が多いのがわかります。
移動支援に求めること
479の事業所を対象に調べた利用者からの地方自治体への要望の内容で多かったのは次の通りです。(複数回答可)
・通学用途に使えるようにしてほしい(56.6%)
・利用可能回数が不足しているので月あたりの利用可能回数を増やしてほしい、または上限を超えた利用をさせてほしい(43.8%)
・通院用途に使えるようにしてほしい(29.6%)
・通勤用途に使えるようにしてほしい(27.6%)
利用目的と利用時間の関係でも、通学を許可している地方自治体の利用時間の平均値が 14.016 時間で最も多いのです。
そして通勤、通学、通院のうち複数の利用目的を許可している地方自治体では、通勤と通院を許可した地方自治体の利用時間の平均値が10.919時間で最も多くなっています。
これらのことから移動支援は通学、通勤、通院で利用したいという需要が高いことがわかります。
参考:PwCコンサルティング合同会社「地域生活支援事業を効果的に実施するための実態の把握に関する調査研究 事業報告書」
参考:PwC公式ホームページ
まとめ
移動支援とは地域生活支援事業の1つで、屋外での移動が困難な障がい者に対し、地域における自立生活および社会参加を促すことを目的として外出のための支援を行うことを指します。
年中無休で比較的長時間サービスを提供している事業所が多いものの通学、通勤、通院で利用したい人のニーズをまだカバーしきれていない部分もあると言えるでしょう。
この記事も参考にし、ぜひ移動支援に対する理解を深めてみてください。