ADHDに漢方薬は効くのか?薬物療法と比較しながらご紹介

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ADHDの症状を抑えるのに漢方薬が効果的だという情報をインターネットで見かけたけれど、本当なのかどうか不安に感じている人はいませんか?
この記事ではADHDに漢方薬を使う治療法が日本ではどのように位置づけられているのかを、薬物療法と比較しながらご紹介します。

ADHDに漢方薬を使う治療法とは?


ADHDの症状に対して漢方薬を使う治療法は、代替医療(代替療法)として位置づけられています。
代替医療とは現段階では標準医療(標準治療=科学的根拠に基づいて行われる現在利用できる最良の医療で健康保険が適用される)と見なされていない医療の総称で、WHOでは「該当国の伝統に基づいており、かつ主流の医療制度に統合されていない医療技法」と定義しているのです。
このことからADHDの治療として漢方薬を使用する時は標準治療ではないことと、医師が処方した以外の市販の漢方薬の場合、健康保険の適用が受けられないのを覚えておく必要があるでしょう。
参考:世界保健機関「伝統医療の研究・評価の方法論の一般的ガイドライン」

ADHDの症状におすすめの漢方薬


現在の医療では標準治療でもADHDを根本的に治療することはできないことと、ADHDの症状に対して漢方薬を使う治療法は代替医療であることを考慮し、漢方薬は二次障がい、併存障がいへの治療や日常における困りごとの解消を目的に使用するのが望ましいと言えるでしょう。
このことを踏まえてADHDの症状におすすめの漢方薬を3つご紹介します。

抑肝散


つちうら東口クリニックでは2003年~2009年までの間に抑肝散をADHDの人21人、広汎性発達障がい17人(内アスペルガー5人)、チック障がい14(内トゥレット3人)、神経症9人、知的発達障がい8人、 夜驚症6人に処方しました。
その結果ADHDの人において短気で粗暴な外在化する併存障がいを持っている人では、抑肝散の有効率が8割という結果が出たのです。
このことからADHDの併存障がいで問題行動を起こしている人は、抑肝散で症状を改善できる可能性があることがわかります。
参考:第61回日本東洋医学会学術総会「伝統医学臨床セミナー 抑肝散の応用」

抑肝散加陳皮半夏


ADHDの人の中で25~55%の人が睡眠障がいを併発していることがわかっていますが、医療法人社団北海道こども心療内科氏家医院では、発達障がい、不登校、チック、夜驚症、その他の課題を抱える73人の男児、女児に対し抑肝散加陳皮半夏を1か月以上服用してもらいました。
その結果73人中64人で発達障がいに伴う睡眠障がいと癇癪・すぐに興奮するなどの情緒行動症状の改善が見られました。
このことからADHDで睡眠障がいや情緒行動症状がある人の場合、抑肝散加陳皮半夏を服用することで症状の改善が見られる可能性があることがわかります。
参考:柴田真緒 高橋智「発達障害者の睡眠困難と支援に関する研究」
参考:氏家武「児童精神科疾患に対する抑肝散加陳皮半夏の効果について」

その他の漢方薬


ADHDの人には抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、甘麦大棗湯、黄連解毒湯、香蘇散、柴胡加竜骨牡蛎湯、当帰芍薬散などの漢方薬を症状に合わせて使い分けることがあります。
これらの薬には鎮静作用、睡眠障がいの改善、イライラを抑えるといった効果があるため、標準治療の薬と併用して処方されることもあるでしょう。

ADHDの薬物療法


ADHDの標準治療では、どのような薬が用いられるかも見てみましょう。
特性の種類薬の種類薬名作用概要
不注意中枢神経刺激薬メチルフェニデート(コンサータ)主に脳内のドーパミンとノルアドレナリンの働きを強める
  • 1日1回の服用で約12時間効果が持続する
  • 入眠しにくいといった副作用があるため午後の服用は避ける
ADHDの特性全体SNRIアトモキセチン(ストラテラ)主に脳内のノルアドレナリンの働きを強める
  • 脳の覚醒を比較的少なくしながらADHDの症状を抑えられる
  • カプセルだけではなく液状の薬も選べる
多動・衝動性非中枢刺激薬グアンファシン(インチュニブ)主に脳内のノルアドレナリンの受容体であるα2A受容体を刺激し、シグナル伝達を改善する
不注意・衝動性中枢神経刺激薬リスデキサンフェタミン(ビバンセ)ノルアドレナリンとドーパミンのトランスポーター阻害作用やノルアドレナリンとドーパミンの遊離作用などにより、シグナル伝達を改善するとされている

ADHDの薬物療法では、ADHDの不注意や衝動性などの症状を改善することを目的として、脳内の神経伝達機能を改善するための薬が用いられます。
標準治療で処方された薬も漢方薬も医師の指示に従って服薬することが重要なので、勝手に薬を止めたり、飲む量を増減したりするのはやめましょう。

まとめ


ADHDの症状に対して漢方薬を使う治療法は、代替医療(代替療法)として位置づけられているため、標準治療ではないことと、市販の漢方薬を使用するなら保険が適用されないことを覚えておきましょう。
この記事も参考にしてぜひ漢方薬に対する理解を深め、適切な形で治療に用いてみてください。