発達障がいの原因とは何か?最新の研究成果を詳しくご紹介

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愛する我が子が発達障がいであると知った時、親としてはその原因と治るかどうかをまず知りたくなるでしょう。
この記事では発達障がいの原因とは何かを調査した最新の研究成果について詳しく解説します。

発達障がいの定義とは?治るのか?


発達障がいとは生まれつき見られる脳の働き方の違いにより幼児の時から行動面や情緒面に特徴がある状態を指し、発達障害者支援法の第2条で自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障がい、学習障がい(LD)、注意欠陥多動性障がい(ADHD)、その他これに類する脳機能障がいで子供のころから症状があるものと定義づけられています。
脳機能の発達に関係する障がいのため、障がいそのものを治療することは困難ですが、その特性を踏まえて本人が日常生活や社会生活を送りやすくするための治療やサポートを行うことができます。
参考:e-GOV法令検索「発達障害者支援法」

発達障がいの原因


発達障がいは複数の要因の組み合わせが原因となって引き起こされますが、詳細についてはまだわかっていません。
発達障がいを引き起こす要因には、次のようなことがあるとされています。
  • 未熟児出産、低体重出産、多胎出産、妊娠中の感染症
  • 喫煙、アルコール摂取、薬物の使用
  • 遺伝的要因
  • 環境要因

このことを踏まえて、自閉スペクトラム症、ADHD、LDの原因について現在わかっていることをご紹介します。
参考:アメリカ疾病予防管理センター 発達障がいホームページ「原因とリスク要因」

自閉スペクトラム症の原因


自閉スペクトラム症は遺伝性が高く、自閉スペクトラム症の人の兄弟や姉妹は自閉スペクトラム症ではない人の兄弟や姉妹と比較して、25倍自閉スペクトラム症になるリスクが高いことがわかっています。
そのため、日本でもこの分野に関する研究が行われており、2020年には大阪大学大学院歯学研究科と国立精神・神経医療研究センターの共同研究チームが、自閉スペクトラム症の人で最も多くの突然変異が見受けられるPOGZ遺伝子が脳の正常な発達に必要であることと、この遺伝子の機能低下が社会性行動の低下やコミュニケーションの異常を引き起こすことを発見しました。
また自閉スペクトラム症の原因の1つとして、神経細胞のシナプス機能(神経情報を出力する方と入力する方の間に発達した情報を伝えるための接合部位とその構造を指す)の異常が考えられていますが、2020年に東京大学大学院の研究チームがシナプス機能の異常と社会性低下の因果関係や社会性低下の原因となる脳領域をマウスでつきとめたのです。
これらのことから、遺伝や神経細胞の機能異常などさまざまな自閉スペクトラム症の原因となる要素を研究する取り組みが進められていることがわかります。
参考:アメリカ国立医学図書館 ダニエル・H・ゲシュウィンド「自閉症の進歩」
参考:国立研究開発法人 日本医療研究開発機構「自閉スペクトラム症患者に生じている遺伝子突然変異が脳の発達や社会性に異常をもたらす分子メカニズムを解明」
参考:国立研究開発法人 日本医療研究開発機構「自閉スペクトラム症の病態解明に寄与するメカニズムを発見」

ADHDの原因


ADHDも自閉スペクトラム症と同様に遺伝性が高く、ADHDの人の両親、兄弟、子供はそうではない人と比較して5倍ADHDとなるリスクが高いことがわかっています。
また母親の喫煙、アルコール摂取、薬物摂取などもADHDのリスクを高めることがわかっていますが、2016年にノルウェーで発表された「ADHDの成人のビタミンレベル」という論文では、ADHDの症状がひどい患者はビタミンB2、B6の血中濃度が低いことが報告されているのです。
これらのことから遺伝の影響、環境の影響などいろいろなADHDの原因となる要素が研究されていることがわかるでしょう。
参考:心身医学 村上佳津美「注意欠如・多動症(ADHD)特性の理解」
参考:アメリカ国立医学図書館 英国心理学会「注意欠陥多動性障害:小児、若者および成人におけるADHDの診断および管理」
参考:アメリカ国立医学図書館「ADHDの成人のビタミンレベル」

LDの原因


LDは中枢神経系に何らかの機能障がいがあると推定されますが、視覚障がい、聴覚障がい、知的障がい、情緒障がいなどの障がいや、環境的な要因が直接的な原因とはならないことがわかっています。
日本では一般社団法人日本LD学会がLDに関する研究を進め、最新結果を機関誌などで公表しています。
参考:文部科学省「学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)及び高機能自閉症について」
参考:一般社団法人日本LD学会公式ホームページ

まとめ


発達障がいは複数の要因の組み合わせが原因となって引き起こされますが、詳細についてはまだわかっておらず障がいそのものを治療することは困難です。
しかしその特性を踏まえることで、本人が日常生活や社会生活を送りやすくするための治療やサポートを行うことができるでしょう。
この記事も参考にして、ぜひ発達障がいの原因について理解を深めてみてください。