アスペルガー症候群とは?症状から治療方法まで詳しく解説

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アスペルガー症候群の人が周囲にいるけれど、どのような障がいかよく知らないのでどうサポートすればよいか困っているという人はいませんか?
この記事ではアスペルガー症候群の症状から治療方法まで詳しく解説します。

アスペルガー症候群とは?


アスペルガー症候群とは、自閉スペクトラム症のうち言葉の発達や知的発達の遅れがない状態を指します。
しかし精神障がいの診断基準を示すためにアメリカ精神医学会によって1980年に出版された書籍「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)」の第5版であるDSMー5では、早期幼児自閉症、小児自閉症、カナー型自閉症、高機能自閉症、非定型自閉症、小児期崩壊性障害、アスペルガー症候群が「自閉スペクトラム症」として統合されたのです。
このことから、この記事では自閉スペクトラム症の症状や治療方法について採り上げていきます。

自閉スペクトラム症の症状


自閉スペクトラム症の人にはどのような症状があるのでしょうか。
3つご紹介します。

社会的コミュニケーションの障がい


自閉スペクトラム症の人は他者とのコミュニケーションや相互関係に障がいがあり、次のような傾向が見られます。
  • 他者に対して興味や関心を持ちにくい
  • 視線が合わない
  • 親の後追いをしない
  • 人見知りをしない

人によって程度は異なり発達によっても変化しますが、その場の状況を理解したり、適切な行動をしたりするのが苦手だということです。
また言葉をコミュニケーションの道具として使うことも得意ではないため、一方的なコミュニケーションとなったり、言外の意味を理解できなかったりするでしょう。

興味が限定的で反復行動をする


自閉スペクトラム症の人は興味が限定的でルーティーンのような反復的な行動を好みます。
物事が変化することに抵抗があり、好きなことに強い執着を持ったりするため、特定の分野において深い知識を身に着けられる場合もあるでしょう。

併存症と二次障がい


自閉スペクトラム症の人に起こりやすい併存症と二次障がいは次の通りです。
依存症と二次障がいの種類割合
不安障がい43%~84%
うつ病2%~30%
強迫性障がい37%
ADHD59%
反抗挑戦症7%
チック症8%~10%
てんかん発作5%~49%
睡眠障がい52%~73%
興奮性、攻撃的行動などの非特異的な異常行動8%~34%
自傷行動34%

自閉スペクトラム症の人の症状を把握する際は、これらの併存症や二次障がいについても理解し、治療の方向性を定めていくことが大切です。
参考:心身医学「自閉スペクトラム症(ASD)の特性理解」

自閉スペクトラム症の治療


自閉スペクトラム症の根本的な治療方法はまだ確立されていないため、障がい自体の治癒ではなく症状の緩和や、併存症と二次障がいの治癒を目的として次のような治療が行われます。

心理社会的治療


心理社会的治療とは自閉スペクトラム症の人の個々の特性や発達レベルに合わせた働きかけによって行動の改善を促す治療方法で、次のような種類があります。
治療方法の種類対象者概要
環境調整子供~大人家や学校、職場での困りごとを少なくするのを目的に、苦手な状況を減らしたり、スムーズな行動ができたりするよう環境を整える
行動療法子供~大人コミュニケーション能力の向上や問題行動を減らすのを目的に、ソーシャルスキルトレーニングや応用行動分析(望ましい行動を理解してもらい不適切な行動に対処する手法)を行う
教育療法就学前の子供言語の遅れへのサポートとソーシャルスキル向上を目的に理学療法、作業療法、言語聴覚療法、ソーシャルスキルトレーニングなどを行う
家族療法自閉スペクトラム症の人の家族自閉スペクトラム症の人との関わり方や日常の困りごとへの対処方法を学ぶのを目的に、ペアレント・トレーニングやピアサポートなどを行う
薬物療法子供~大人自閉スペクトラム症によって引き起こされる二次障害の症状を緩和するのを目的に、処方された薬を服薬する

最近の研究では早期の治療開始により予後がよくなると言われているため、気になる症状があれば早めに受診するのがよいでしょう。

薬物療法


薬物療法とは自閉スペクトラム症の併存症や二次障がいの症状の改善を目的として医師が薬を処方する治療方法で、症状に合わせて次のような薬が用いられます。
障がいの種類症状薬の種類薬名
自閉スペクトラム症てんかん抗てんかん薬
  • カルバマゼピン(テグレトール)
  • バルプロ酸ナトリウム(デパケン)
ADHDの併発や多動中枢神経刺激薬
  • メチルフェニデート(コンサータ)
感覚過敏感情調整薬
  • リスペリドン(リスパダール)
  • エビリファイ
パニックSSRI
  • パロキセチン(パキシル)
  • フルボキサミン(テプロメール)

どのような処方薬でも同じですが、医師の指示に従って服用し勝手に飲むのをやめたり、飲む量を調整したりしないようにしましょう。

まとめ


アスペルガー症候群とは、自閉スペクトラム症のうち言葉の発達や知的発達の遅れがない状態を指し、現在では自閉スペクトラム症として名前が統合されていますが、根本的な治療方法はまだ確立されていません。
この記事も参考にして、自閉スペクトラム症の症状について理解を深め適切なサポートを行ってみてください。