発達障がいの人が人の顔や名前を覚えられない原因は?対策も含めてご紹介

トピックス 障がいと付き合っていく

発達障がいの人が周囲の人の顔や名前をなかなか覚えられないと悩んでいるけれど、どんなサポートをしたらよいのかよくわからず困っている人はいませんか?
この記事では、発達障がいの人が人の顔や名前を覚えられない原因から対策まで詳しくご紹介します。

発達障がいの人が人の顔や名前を覚えられない原因とは?


発達障がいの中で、自閉スペクトラム症の人とADHDの人は人の顔や名前を覚えられないことがあるとされていますが、まだはっきりと原因はわかっていません。
しかし、自閉スペクトラム症の人は子供のころからアイコンタクトをせず、人の顔そのものに対する興味や関心が薄いということがわかっています。
また定型発達の人は人の顔を見る時目の周辺を注視する時間が長いのに対し自閉スペクトラム症の人は極端に短く、口周辺を見る時間が長いという研究結果もあるのです。
このことから、自閉スペクトラム症の人の顔の認知の仕方が定型発達の人とは異なることが顔や名前を覚えられない原因の1つとなっていることが予想できるでしょう。
また2017年、オランダが発行する世界的な精神医学誌である「The Lanset Psychiatry」にADHDの人の脳の仕組みに関する新しい研究結果が発表されましたが、ADHDの人は「脳の体積」と、「尾状核」「被殻」「側坐核」「扁桃体」「海馬」の5つの領域が定型発達の人よりも小さいという違いがあることがわかったのです。
脳の領域のうち海馬は短期記憶を司る部分で、ADHDの人はこの部分の容量が少ないため、今見た人の顔や名前をすぐに忘れてしまうというわけです。
しかしADHDの人の場合、長期記憶を司る側頭葉には問題がないため、顔や名前が長期記憶に移動すれば忘れにくくなるでしょう。
参考:精神保健研究「自閉症スペクトラム障害児の顔認知研究の現状と展望」
参考:Medical News Today「Large imaging study confirms brain differences in ADHD」

発達障がいと相貌失認の違い


人の顔を覚えられないという症状は、相貌失認という疾患でも起きます。
相貌失認は視覚や知的機能に問題がないにもかかわらず顔を覚えられない先天性相貌失認、頭部の損傷、脳腫瘍、血管障がいなどが原因で引き起こされる後天性相貌失認の2種類にわけられますが、このうち先天性相貌失認の人は発達障がいの人と混同されやすいと言えるでしょう。
しかし2016年に発表された「発達障害における顔認知」という論文では、先天性相貌失認の人と自閉スペクトラム症の人の顔認知障がいのメカニズムは異なる可能性が指摘されているのです。
先天性相貌失認の人が顔を覚えられないのは顔のパーツである目や口の特徴、目や口までの距離などの情報を全体的に統合して処理することができないのが原因とされていますが、自閉スペクトラム症の人はこのようなことはないと言われています。
参考:小西海香「発達障害における顔認知」

発達障がいの人が顔や名前を覚えられないことへの対策とは?


発達障がいの人が顔や名前を覚えられない場合、どのような対策が考えられるのでしょうか。
自閉スペクトラム症とADHDにわけてご紹介します。

自閉スペクトラム症の人の場合


自閉スペクトラム症の人は自分が興味や関心を持ったことへの記憶力が高いので、名前や顔を興味のあることと結びつけて覚えるとよいでしょう。
例えば数字に興味があるなら出席番号や内線番号など、名前や顔を何らかの法則で数字に紐づけて覚えるということです。
そして周囲の人に名前と顔を覚えるのが苦手であることをあらかじめ伝えておき、理解を求めておくのもよい対策だと言えるでしょう。
また自閉スペクトラム症の人はソーシャルスキルトレーニングに取り組むことで相手への注目行動が改善されることもわかっているため、まず周囲の人に関心を持つことから始めたい場合はソーシャルスキルトレーニングを受けてみるのもおすすめです。
参考:精神保健研究「自閉症スペクトラム障害児の顔認知研究の現状と展望」

ADHDの人の場合


ADHDの人は短期記憶が苦手で長期記憶を得意とするのを利用して、人の顔や名前を短期記憶から長期記憶に素早く切り替える方法を用いると覚えやすくなるでしょう。
長期記憶に切り替えやすくする覚え方は次の通りです。
  • その時の感情(喜怒哀楽)とセットで覚える
  • 場所とセットで覚える
  • メモを取る

ADHDの人はメモをしたことやメモを取った紙の存在自体を忘れる場合があるため、メモはいつも自分が身に着けている手帳などにまとめて取っておくことが大切です。
また長期記憶になりやすいのは人間が活動を始める時間帯なので、朝にメモを読み返すのも良いでしょう。

まとめ


発達障がいの人の中には顔や名前を覚えられない人がいますが、自閉スペクトラム症とADHDではそれぞれ原因が異なるため対策もそれぞれの特性に合った形で行うのが望ましいでしょう。
この記事も参考に、本人にとって適切なサポートはどのようなものかを考え実践につなげていってください。