発達障がいの人は方向音痴が多い?原因から改善方法まで詳しく解説

トピックス 障がいと付き合っていく

発達障がいの人が周囲にいて、方向音痴のためいつも新しく行く場所への移動に困っているけれど、どうにかサポートすることはできないかと考えている人はいませんか?
この記事では発達障がいの人に方向音痴の人が多い原因から対処方法まで詳しく解説します。

発達障がいの人に方向音痴の人が多い原因とは?


発達障がいは主に自閉スペクトラム症、ADHD、LDの3つにわけられますが、発達障がいの人が必ず方向音痴となるわけではないため、その原因ははっきりとはわかっていません。
自閉スペクトラム症の人の場合こだわりが強いという特性がありますが、道に対してもこれは変わらず決まった道以外通らない、新しい道をうまく受け入れられないといったことが起こります。
そのため新たなルートを模索することができず、結果的に方向音痴となってしまうと言われているのです。
ADHDの人とLDの人は3次元の空間における物の位置関係、方向、姿勢、大きさ、形状、感覚などを正しく認知する力である空間認知能力が低いという特徴があります。
そのため目的地までの道順をイメージするのが難しいとされているのです。
またADHDの人は短期記憶を司る海馬の容量が少なく、目的地にたどりつくための目印の位置や歩いてきた道の風景を忘れてしまうことから方向音痴になってしまうことがあるようです。
参考:Medical News Today「Large imaging study confirms brain differences in ADHD」

発達障がいの人が方向音痴を改善するには?


発達障がいの人が方向音痴を改善するには、どのような方法があるのでしょうか。
自閉スペクトラム症、ADHD、LDそれぞれの場合について説明します。

自閉スペクトラム症の場合


自閉スペクトラム症の人の場合、こだわりが強く決まった道しか通らないこと、他の道を同時進行で考えるのが苦手であることなどの特性から、方向音痴自体の改善は難しいでしょう。
しかし、自閉スペクトラム症の人が目的地へと時間通りに到着するための対処方法は次のようなことが考えられます。
  • 初めて行く場所は迷う前提で目的地までの時間を考えておく
  • 遅れてはいけない場合は下見をしておく
  • GoogleMAPなど現在地が把握できるツールをあらかじめ準備しておく
  • 乗換案内で使用する交通機関を調べ画面をスクリーンショットで保存しておく
  • 道や時間などの事前確認は複数回しておく

道に迷う前提で予定を立て、ゆとりを持って行動できるようにしておくことと、事前に迷った際に対処するためのツールを準備しておくことが目的地に時間通りに到着することへとつながるでしょう。
本人が周囲の人にあらかじめ時間に遅れる可能性があることを伝え、理解してもらうことも重要です。

ADHDとLDの場合


ADHDとLDの人の場合、空間認知能力が低いことから地図を見て自分の位置や進む方向を把握したり、特徴的な形のものを目印にして道を探す手がかりにしたりすることが苦手です。
そのため、空間認知能力を鍛えることで方向音痴の改善が見込めるでしょう。
空間認知能力を鍛えるためにはビジョントレーニングが行われますが、これにより対象物にピントを合わせて映像として捉える働きである入力(眼球運動)、対象物の形や位置を認識する働きである情報処理(視空間認知)、認識された情報に合わせて身体を動かす働きである出力(目と身体の協応)の3つの目の働きを鍛えることができます。
大人に対するビジョントレーニングは視覚訓練士が、子供に対するビジョントレーニングは発達臨床心理士や発達支援員などが行うことが多いでしょう。
ビジョントレーニングには次のような種類があります。
ビジョントレーニングの種類概要
眼球運動のトレーニング
  • 目を上下左右に動かすトレーニング
  • 目の入力の働きを鍛えることができる
  • 紙に書いた線を目で追うなど簡単な方法でトレーニングできる
視空間認知のトレーニング
  • 対象物と見本を同じ形にしたり、同じ色にしたりするトレーニング
  • 目の情報処理の働きを鍛えることができる
  • 折り紙、パズル、ブロック、塗り絵など身近なものを使ってトレーニングできる
作業療法のトレーニング
  • 身辺の自立や学習、社会参加のために必要な能力全般を鍛えるトレーニング
  • 目の出力の働きを鍛えることができる
  • 図形や文字の模写、運動能力から集団生活能力まで幅広くトレーニングする

ビジョントレーニングで目の働きを鍛えることで、方向音痴だけではなく文字の読み書きや絵がうまくなるなど、他にもさまざまな改善が見込めるため、ADHDとLDの人の生活の質(QOL)の向上につながるでしょう。

まとめ


発達障がいの人は必ず方向音痴だというわけではありませんが、自閉スペクトラム症の人はこだわりが強いという特性から、またADHDの人とLDの人は空間認知能力が低いことから方向音痴が引き起こされるとわかっています。
発達障がいの人それぞれが方向音痴でどのように困っているかを把握し、適切なサポートをすることが重要です。