障害者差別解消法の改正内容とは?ポイントをわかりやすく解説

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障害者差別解消法が2021年に改正されたのは知っているけれど、いまいち内容について理解できないと困っている人はいませんか?
この記事では障害者差別解消法の改正内容とそのポイントについてわかりやすく解説します。

障害者差別解消法とは?


日本は2006年に国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」を2014年に批准しています。
これに基づき全ての国民が障がいの有無に関係なく共生する社会を作るため、障がいが理由の差別をなくすことを目的として、2016年4月1日から障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律、通称障害者差別解消法が施行されました。
この法律の対象となるのは身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者、その他の心や身体の働きに障がいのある人で、障がい児も含まれます。
また2021年5月に障害者差別解消法は改正されたため、改正法は公布の日(2021年6月4日)から起算して3年を超えない範囲で政令で定める日から施行されることとなっているのです。
参考:e-GOV法令検索「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」
参考:内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進」

障害者差別解消法改正におけるポイント


2021年に、障害者差別解消法は第3条、第6条、第8条、第14条、第16条がそれぞれ改正されましたが、改正のポイントはどのような部分なのでしょうか。
2つに分けてご紹介します。

事業者による合理的配慮の提供の義務化


障害者差別解消法では障がい者への不当な差別的取扱いが禁止され、合理的配慮をするよう求められています。
合理的配慮とは事務や事業を行う上で障がい者から何らかの配慮を求められた場合、過重な負担とならない範囲で社会的な障壁(施設、設備、制度、慣行、観念など)を取り除くために必要な配慮をすることですが、これが2021年の改正で努力義務から義務へと改められ、その旨が第8条に記載されました。
この改正により、事業者は障がい者に対し必ず合理的配慮をしなければならなくなったということです。

事業者による合理的配慮の提供の義務化に伴う対応


事業者に対し合理的配慮を義務化するにあたって、どのような対応がされるのかが第3条、第6条、第14条、第16条に記載されました。
具体的な内容は次の通りです。


対応の項目概要
国と地方公共団体の連携協力の責務の追加
  • 国と地方公共団体は、障がいを理由とする差別解消の推進に関して必要な施策が効率的で効果的に行われるよう適切な役割分担を行い、相互に連携を図りながら協力しなければならない
障がいを理由とする差別を解消するための支援措置の強化
  • 基本方針に定める事項として、障がいを理由とする差別を解消するための支援措置の実施に関する基本的な事項を追加する
  • 国と地方公共団体が障がいを理由とする差別に関する相談に対応できる人材を育成したり、確保したりする責務を明確化する
  • 地方公共団体は障がいを理由とする差別とその解消のための取り組みに関する情報(事例など)の収集、整理、提供に努める

事業者が合理的配慮をするにあたって、国や地方公共団体がそれぞれの役割を果たしながら連携をしなければならない旨が記されています。
参考:内閣府「付録3 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律 新旧対象条文」

合理的配慮の参考になる事例について


事業者には障がい者に対して合理的配慮が義務付けられたことは理解できたけれど、過度な負担にならないようにしながら具体的にどのようなことをすればよいのかわからない人のために、事例を参考にできるサービスが内閣府のホームページにある「合理的配慮具体例データ集 合理的配慮サーチ」です。
合理的配慮はそれぞれの障がい者が持つ特性、また社会的障壁をなくす必要のある場面によってさまざまに異なることから個別の事例に目を通すのがとても参考になります。
「合理的配慮具体例データ集 合理的配慮サーチ」ではトップページから次の項目で検索をかけることができます。
項目詳細
障がいの種別
  • 全般
  • 視覚障がい
  • 聴覚・言語障がい
  • 盲ろう
  • 肢体不自由
  • 知的障がい
  • 精神障がい
  • 発達障がい
  • 内部障がい、難病等
生活の場面
  • 行政
  • 教育
  • 雇用・就業
  • 公共交通
  • 医療・福祉
  • サービス(買い物、飲食店など)
  • 災害時

自分が検索したい条件をクリックすると、事例集だけではなく報告書、アンケート結果、ガイドブックなど事例を含むさまざまな文献にたどりつけるため、ニーズに合った事例に目を通し、参考にすることが可能です。
ある障がいを持つ人についていろいろな生活の場面を想定し、検索してみるといった使い方をすれば、より深くその障がいに対する合理的配慮について学ぶことができるでしょう。
参考:内閣府「合理的配慮等具体例データ集 合理的配慮サーチ」

まとめ


2021年5月に障害者差別解消法が改正されましたが、改正のポイントは事業者に対して合理的配慮が義務付けられたこと、合理的配慮を義務化するにあたって国と地方公共団体がそれぞれの役割を果たしながら連携することの2つです。
この記事も参考にして、ぜひ新しくなった障害者差別解消法について理解を深めてみてください。