発達障がいの人はゲーム依存に陥りやすい?やめられない理由から治療方法まで詳しく解説

トピックス 障害と付き合っていく

発達障がいを持つ友達が最近オンラインゲームばかりしていて、仕事や家事が手についていない様子だけれど、どのようにサポートしたらよいかわからず困っている人はいませんか?
この記事では、発達障がいの人がゲーム依存となりやめられない理由から治療方法まで詳しく解説します。

ゲーム依存とは?


ゲーム依存は正式名称を「ゲーム症(障がい)=Gaming Disorder)」と言い、2018年6月18日に公表されたICD-11(国際疾病分類 第11版)に収載され、2019年5月に世界保健機関(WHO)が国際疾病として認定しました。
ゲーム症の人には次のような症状が見られます。
  • ゲームをすることに対し制御ができない
  • ゲームに没頭することへの優先順位が生活上の利益や日常の活動より高い
  • ゲームがうまく進まないなどマイナスの結果が生じてもゲームを続けエスカレートする

オンライン、オフラインに関わらず全てのゲームがゲーム症の対象となります。
参考:WHO「ゲーム障害」

発達障がいの人がゲーム依存を併存する割合


発達障がいの人のうちゲーム依存を併存している人はどのくらいの割合で存在するのでしょうか。
2019年4月に発表された「児童・青年期における行動嗜癖 児童・青年期のインターネット・ゲーム依存 大学病院での経験から」という論文では、インターネットの主な使い道を「ゲーム」と回答した人173人を対象にインターネット依存度テストで50点未満の人を正常使用群、50点以上70点未満の人を問題使用群、70点以上の人を病的使用群として分類しました。
その結果は次の通りです。
障がいの種類問題使用群病的使用群軽度知的障害(7人)14.3%(1人)0%(0人)ADHD(33人)15.2%(5人)9.1%(3人)自閉スペクトラム症(62人)24.2%(15人)4.8%(3人)
この結果から、障がい者の中でも自閉スペクトラム症の人とADHDの人はゲーム依存を併存しやすいことがわかります。
参考:児童青年精神医学とその近接領域「児童・青年期における行動嗜癖 児童・青年期のインターネット・ゲーム依存 大学病院での経験から」

発達障がいの人がゲームをやめられない理由とは?


発達障がいの人がゲーム依存となり、やめられないのにはどのような理由があるのでしょうか。
自閉スペクトラム症とADHDの人に分けてご紹介します。

自閉スペクトラム症の人がゲームをやめられない理由


自閉スペクトラム症の人には次のような特性が見られます。
  • 対人コミュニケーションが苦手
  • 興味の幅が狭く没頭しやすい
  • 行動を切り替えることが苦手でルーティンを好む

あまり対人コミュニケーションを必要とせず、ルールに即して進めることのできるゲームは自閉スペクトラム症の人にとって依存の対象になりやすいと言えるでしょう。

ADHDの人がゲームをやめられない理由


ADHDの人には次のような特性が見られます。
  • 好きなことや興味のあることに対して過集中を起こしやすい
  • 多動性や衝動性があるためさまざまな情報や変化に富んだ刺激を求める
  • 将来の大きなメリットより目先のメリットを優先する傾向にある

楽しそうだと感じると衝動的にゲームを始め、気づくと過集中になってしまうことが多いでしょう。

発達障がいの人がゲーム依存となった時の治療方法


発達障がいの人がゲーム依存となった場合、次のような治療を行います。
治療方法概要
薬物療法
  • ゲーム依存そのものに有効な薬はないが、ゲーム依存に併存する症状に対して薬物療法を行う場合がある
カウンセリング
  • ゲーム症という病気に対して理解を進めることでゲームをする時間を減らしたり、やめたりする必要性に気づいてもらう
  • 本人がゲームに対してどのように考えているか、没頭する原因、日常的に感じているストレスなどをヒアリングして治療に役立てる
モニタリング
  • 行動を記録することによって依存の度合いを確認する
認知行動療法
  • ものの受け取り方や考え方に働きかけ、ストレスに上手に対応できる状態を作っていく
入院治療
  • 物理的にゲームから遠ざける
  • 期間は2ヵ月程度
  • ゲームができるオンライン機器は使用禁止とする
  • 入院している期間に生活のリズムを整え、医師や家族と繰り返し話し合いをしながら退院後のゲームのつきあい方を具体的に決める

他のさまざまな治療を試みても回復が見られなかった場合に入院治療が選択されますが、2022年現在入院治療を受け入れている医療機関は限られていることに注意しましょう。

まとめ



発達障がいの人の中では自閉スペクトラム症とADHDの人がその障がい特性からゲーム依存を併存しやすく、2019年に国際疾病として認められた新しい病気であることから、治療方法がないわけではないものの、入院治療を受ける機会は少ないと言えるでしょう。

発達障がいの人がゲーム依存になりかけているのに気づいたら、まず受診するよう声をかけることから始めてみてはいかがでしょうか。