精神障がいの人と一緒に働く職場で配慮できることとは?障がいの特性から配慮のポイントまでご紹介

トピックス 障がい者とシゴト 経営者向け 合理的配慮

障害者差別解消法が2021年に改正され、精神障がい者の働く職場でも合理的配慮をするのが義務づけられたけれど、具体的にどのようなことをすればよいのかよくわからず困っている人はいませんか?
この記事では、精神障がい者と一緒に働く上で知っておきたい障がい特性から合理的配慮のポイントまで詳しく解説します。

障害者差別解消法の改正について


2021年の障害者差別解消法の改正では、障がい者、障がい児を対象とした不当な差別的取扱いが禁止され、合理的配慮をすることが義務付けられました。
そのため、事業者は雇用の際や職場において障がい者に対し必ず合理的配慮をしなければならないのです。
参考:e-GOV法令検索「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」
参考:内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進」

精神障がいの特性と職場における合理的配慮のポイント


精神障がい者といっても人によって症状はさまざまなため、代表的な精神障がいの特性とそれに応じた職場における合理的配慮のポイントをご紹介します。

統合失調症


統合失調症の人の特性と、職場における合理的配慮のポイントは次の通りです。
総合失調症の人の特性合理的配慮のポイント
主な症状は陽性症状における幻覚、妄想、陰性症状における生活の困難、認知や行動の障がいなど
  • 周囲の人が統合失調症の症状に対し正しい知識を持つ
  • 治療のため決まった時間に服薬ができるよう配慮する
  • 病気の症状が強い時は休養を取ったり、受診したりするよう促す
  • 仕事で一度にたくさんの情報を伝える必要のある時は紙に書くなどしていったん整理し、ゆっくり伝える
  • ストレスや環境の変化に弱いことを理解し配慮する

認知や行動の障がいでは仕事の指示の内容などがうまくつかめなかったり、考えがうまくまとまらなかったりすることがあるためそれを理解した上で接し方を考えるのが望ましいでしょう。

気分障がい


気分障がいの人の特性と、職場における合理的配慮のポイントは次の通りです。
気分障がいの人の特性合理的配慮のポイント
  • 気分の波がある病気でうつ状態のみの場合はうつ病、うつ状態と躁状態を繰り返す場合は双極性障がいと呼ぶ
  • うつ状態の症状は気分の落ち込み、やる気の喪失、考えがうまくまとまらない、希死念慮など
  • 躁状態の症状は気持ちの過剰な高揚、過活動、他人の話を聴かないなど
  • 周囲の人が気分障がいについて正しい知識を持つ
  • 治療のため決まった時間に服薬ができるよう配慮する
  • うつ状態の時は休養を促し、躁状態の時は安全に配慮する
  • 対応が難しい場合は専門家に相談する

躁状態の時の職場における配慮が難しいため、専門家に相談しながら対応していくことをおすすめします。

てんかん


てんかんの人の特性と、職場における合理的配慮のポイントは次の通りです。
てんかんの人の特性合理的配慮のポイント
  • 何らかの原因で一時的に脳の一部が過剰に興奮し発作が起こる
  • 発作の内容はけいれん、意識の消失、意識はあるが認知が変化するなど人によって異なる
  • 周囲の人がてんかんについて正しい知識を持ち医師の指示のもと服薬治療をすることで一般的な生活が送れることを理解する
  • 発作が起こっていない期間は行動を制限せず普通に接する
  • 発作が起こった場合は安全を確保し医療機関へと相談する

発作が起こった時の対処方法を、本人の希望も含めて話し合いをしておくとスムーズでしょう。

依存症


依存症の人の特性と、職場における合理的配慮のポイントは次の通りです。
依存症の人の特性合理的配慮のポイント
  • 過度な依存を繰り返さないと満足できないことから心身の障がいや日常生活への支障が生じる
  • 依存対象はアルコール、ギャンブル、買い物、食べ物などさまざま
  • 本人に病識がない場合も多いが依存症は病気であることを周囲の人が理解する
  • 依存を止めてもまた再度依存する可能性があるが根気よく見守る

本人に病識がない間は受診させることが難しいですが、病識を持った初期の段階で専門の医療機関に受診を促すことで、早期治療につなげることができます。

高次脳機能障がい


高次脳機能障がいの人の特性と、職場における合理的配慮のポイントは次の通りです。
高次脳機能障がいの人の特性合理的配慮のポイント
  • 交通事故や脳血管障がいなどの病気で脳にダメージを受けることで起こる障がい
  • 記憶障がい、注意障がい、遂行機能障がい、社会的行動障がい、病識を持たない、失語症、運動障がい、感覚障がいなどの症状が出る
  • 高次脳機能障害に詳しい医療機関に相談する
  • 記憶障がいにはメモの活用、受傷前の経験の活用などで対応する
  • 注意障がいにはこまめの休憩取得、マルチタスクを避けるなどして対応する
  • 随行機能障害には手順書、スケジュール表、チェックリストを活用して対応する
  • 社会的行動障がいにはあらかじめ行動のルールを決めることで対応する

外見上はわかりにくい障がいのため、本人の希望と専門の医療機関のサポートを受けながら、少しずつ合理的配慮を進めていくのが望ましいでしょう。
参考:厚生労働省「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」

精神障がい者に対する合理的配慮の事例について知りたい時は?


精神障がい者に対して職場で合理的配慮をする際、自社の状況と似た事例を参考にしたいという人も多いのではないでしょうか。
そのような時に役立つのが、内閣府のホームページに掲載されている「合理的配慮等具体例データ集 合理的配慮サーチ」です。
障がいの種別、生活の場面から事例を探すことができ、資料の目次や概要が記載されていることからニーズに合った事例を参考にすることができるでしょう。
参考:内閣府「合理的配慮等具体例データ集 合理的配慮サーチ」

まとめ


精神障がい者に対する合理的配慮はその特性によりさまざまな内容が考えられますが、本人の希望を尊重しつつも職場で無理なくできることから始めてみるのが大切だと言えるでしょう。
この記事も参考にして、精神障がい者の人が自分の能力を活かして働き続けられる職場作りを目指していってください。