障がい者雇用で知的障がい者の人が入社してきたので仕事のサポートや見守りを続けているけれど、最近ストレスを感じている様子のため、何かできることはないかと悩んでいる人はいませんか?
この記事では知的障がい者が抱えやすいストレスの内容から、知的障がい者と働く人が知っておきたいストレスに対する対処方法について詳しく解説します。
知的障がい者の抱えやすいストレスとその影響とは?
知的障がい者は次のようなストレスを抱えているとされます。
- 学業によるストレス
- 職場でのトラブルによるストレス
- 周囲の人とのコミュニケーション困難によるストレス
- 社会的な孤立によるストレス
- 困りごとがあってもSOSを出せないストレス
どれも解決が難しいものばかりに感じますが、これらのストレスは知的障がい者にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。
2022年に「令和4年版 障害者白書」の中で公表された、年齢階層別の障害者数のデータは次の通りです。
障がいの種類 | 65歳以上の人の人数と割合 |
---|---|
身体障がい者 | 311万2千人(72.6%) |
知的障がい者 | 14万9千人(15.5%) |
精神障がい者 | 144万7千人(37.2%) |
厚生労働省が2021年に公表した簡易生命表では男性の平均寿命が81.47才、女性の平均寿命が87.57才となっている中で、65才以上の人の割合が突出して低いのが特徴的だと言えるでしょう。
このことから、知的障がい者は日常生活で大きなストレスを抱えることにより、長生きできないという課題を抱えていることが予想できます。
参考:内閣府「令和4年版 障害者白書 全文」
参考:厚生労働省「令和3年簡易生命表の概況」
知的障がい者の抱えるストレスへの対処方法
日本においては2015年12月1日よりストレスチェック制度が毎年1回全ての労働者に対して実施することが義務づけられたたため、ストレスに関する質問票に労働者が記入し、それを集計・分析することで自分のストレスがどのような状態にあるのかを知ることができるようになりました。
知的障がい者が抱えるストレスに対処するためには、まずどのようなストレスを抱えているのかを知ることが大切ですが、ストレスチェック制度においては知的障がい者にも安心してストレスチェックを受けてもらうために、次のようなことが「知的障害等のある労働者のストレスチェック制度実施に関する運用マニュアル」で推奨されています。
- ストレスチェックの説明会を行い知的障がい者の側にはサポートできる人を配置する
- 説明会ではストレスチェック制度の目的と事業所の方針を伝え、配布資料や絵や図を用いて理解しやすいものを作成する
- ストレスチェックの実施にあたって衛生委員会の調査審議を経る必要があるため、障がい者雇用の状況や障がい特性に応じた合理的配慮について情報提供する
- 衛生委員会は知的障がい者が安心してストレスチェックを受けられるよう社内体制、実施方法、調査票、実施後のフォローについて調査審議する
- ストレスチェックを実施する際は知的障がい者が安心してストレスチェックを受けられる環境を整える
- 知的障がい者にとってわかりやすい調査票を作成する
- 結果のフィードバック書式は知的障がい者にとってわかりやすいものとする
- 医師による面接指導を行う際は面接の意味について事前に説明し、障がいについての知識を持つ医師に依頼する
- 集団分析の際に差別が起こらないよう知的障がい者のデータも含めて集計する
ストレスチェックで高ストレスだと判定されれば本人が医師による面接指導を受けられ、また周囲の人が知的障がい者が感じているストレスの内容に応じた職場環境の改善に取り組むこともできるでしょう。
参考:厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳「ストレスチェック制度について」
知的障がい児の抱えるストレスへの対処方法
知的障がい児は知的障がい者のようにストレスチェックを受けることができないので、どのようなストレスを受けているのかを発見しにくいと言えるでしょう。
しかし、2009年に富山大学の発表した「知的障害児へのストレスマネジメント教育の効果」という論文の中で、知的障がい児に対しストレスマネジメント教育やリラクゼーション訓練を行うことで、ストレスを低減させる効果があることがわかったのです。
具体的には知的障がい児に対し4ヵ月の間ストレスマネジメント教育を行い、ストレスへの対処法として呼吸法、漸進的筋弛緩法、イメージ法などのリラクゼーション訓練を継続したところ、心拍数や血圧が下がり、「怒り」「緊張」「抑うつ」「混乱」などの心理的反応が低下したのです。
このことから、知的障がい児にストレスへの対処方法のスキルを身に着けてもらうことは、ストレスを軽減する上で重要なことだとわかります。
参考:小西一博・稲垣応顕・小林真「知的障害児へのストレスマネジメント教育の効果」
まとめ
知的障がい者は学業によるストレス、職場でのトラブルによるストレス、周囲の人とのコミュニケーション困難によるストレス、社会的な孤立によるストレス、困りごとがあってもSOSを出せないストレスなどを抱えやすいとされますが、ストレスチェックを定期的に行うことで効果的な対処方法が見出せる可能性が高まるでしょう。
この記事も参考にして、知的障がい者や知的障がい児の抱えるストレスに寄り添って対処を進めてみてください。