障がい者雇用で肢体不自由の人が入社すると聞いたけれど、どのようなことに配慮して仕事をお願いすればよいのかわからず困っている人はいませんか?
この記事では肢体不自由の人が仕事をする場合に配慮しなければならないことを、事例も含めて詳しくご紹介します。
肢体不自由とは?
肢体不自由とは身体障害者福祉法の第4条の別表に定められている身体障害の種類の1つで、別表には次の6つが肢体不自由の定義として記載されています。
- 片方の腕、片方の足または体幹の重大な障がいで治る見込みがないもの
- 片手親指の2つの関節のうち指の根本に近い方から先がないもの、または人差し指を含む片手の2本以上の指において、それぞれ指の先端に近い方から先がないもの
- 片方の足において、リスフラン関節(足指の骨それぞれと足の甲の骨の間にある関節)から先がないもの
- 両方の足の指が全てないもの
- 片手親指の機能における重大な障がいまたは人差し指を含む片手の3本以上の指の重大な障がいで治る見込みがないもの
- 上記5種類の他に上記5種類以上に重大だと認められる障がい
肢体不自由の場合、手や足の機能が一定以上に損なわれていることから仕事におけるさまざまな場面で配慮が必要だとわかります。
参考:e-GOV法令検索「身体障害者福祉法」
肢体不自由と障害者差別解消法
肢体不自由の人との仕事における関わり方を考える上で重要なのが障害者差別解消法です。
障害者差別解消法では障がい者への不当な差別的取扱いが禁止され、合理的配慮をするよう求められていますが、肢体不自由の人に対しても正当な理由なく差別することは禁止され、本人が社会におけるバリアを取り除くために何らかの対応を求めた場合、企業は負担の重すぎない範囲で対応しなければなりません。
そのため、厚生労働省では肢体不自由の人に対して雇用上次のような配慮をするのが望ましいとしています。
合理的配慮の項目 | 概要 |
---|---|
残存能力の活用 | 運動機能に障がいのない身体の部位を使って仕事ができるようにする |
職種・職務内容の調整 | 障がいの有無のみで配置することはせず本人の能力に合った職種を探す |
設備の改善・補助具の活用 | 障がいがあっても使いやすいトイレを設置する、仕事で必要な動作を補う機器を活用するなど |
通勤・体調管理への配慮 | 体調や通院に配慮し、必要あれば時差出勤や在宅勤務などもできるようにする |
キャリア・技能向上への配慮 | 研修が受けられない場合は代替手段を含めて配慮する |
メンタルヘルスへの配慮 | 一部の人が職場適応のために努力をするのではなく、周囲の人全体に理解を求め相談しやすい環境を整える |
一方的に会社が内容を決めるのではなく、本人の仕事における困りごとに耳を傾けた上で合理的配慮をすることが大切です。
参考:e-GOV法令検索「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」
参考:厚生労働省「障害別に見た特徴と雇用上の配慮 肢体不自由者」
肢体不自由の人における雇用の現状
2018年に厚生労働省が発表した「平成30年障害者雇用実態調査」によると、身体障がい者で事業所に雇用されて働いていると推計されるのは42万3千人ですが、そのうちの42.0%を占めたのが肢体不自由の人でした。
また雇用形態別では無期契約の正社員が49.3%、月間総実労働時間が通常(30時間以上)の人が79.8%だったのです。
このことから肢体不自由の人は身体障がい者の人の中でも仕事に就いている人の数が多く、正社員として勤務している人も少なくないと予想されます。
また職業では「事務的職業」が32.7%、「生産工程の職業」が20.4%、「専門的・技術的職業」が13.4%で、残存能力を活かし知識や経験を活かして仕事をしている様子がうかがえます。
参考:厚生労働省「障害者雇用実態調査:調査の結果」
肢体不自由の人への合理的配慮の事例について知りたいなら?
自社で肢体不自由の人が仕事をする時、合理的配慮をどのように進めていったらよいのかを考える上で参考になる事例を知りたい場合、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が提供する「障害者雇用事例リファレンスサービス」で事例検索をしてみましょう。
障害者雇用事例リファレンスサービスは障がい者雇用に関するモデル事例と合理的配慮の事例両方を検索することができるシステムで、2022年8月現在フリーワードで「肢体不自由」と検索をかけると2,561件もの事例に目を通すことができます。
また事例を検索する際、業種、障がいの種別、従業員規模といった条件をつけて絞り込むこともできるので、より自社に近い環境の事例を調べることもできるのです。
各社の取り組みの内容には成功したことだけではなく、失敗を経てどのように肢体不自由の人の雇用を定着させていったかが詳しく紹介されているため、ぜひ参考にしてみてください。
参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者雇用事例リファレンスサービス」
まとめ
肢体不自由の人に仕事で配慮しなければならないこととは、障害者差別解消法で定められた不当な差別的取扱いの禁止と合理的配慮をすることですが、本人の困りごとをヒアリングしながら残存能力を活用し、キャリアアップできる環境を整えることが大切だと言えるでしょう。
この記事も参考にして、肢体不自由の人が前向きに仕事に取り組める環境を整えてみてください。