今度から知的障害の人と一緒に働くけれど、どのような障がいなのか知らないので仕事上何に配慮したらよいのかよくわからないと悩んでいる人はいませんか?
この記事では知的障害の定義から原因、障がいの特徴まで詳しく解説します。
知的障害の定義とは?
知的障害は、知的障害の人を支える法律である「知的障害者福祉法」と「障害者総合福祉法」の中で明確に定義づけられていないという側面があります。
医学用語としては、世界保健機関(WHO)が公表している「疾病及び関連保険問題の国際統計分類(ICD)」において「精神遅滞」の言葉が用いられています。
しかし精神障害の診断基準を示すためにアメリカ精神医学会によって出版された書籍「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)」の2013年の改訂版であるDSM-5より、精神遅滞を知的障害と改称しました。
日本では一般的な医学用語として「精神遅滞」、学校教育法上は「知的障害」と言葉を使い分け、発達障害の1つと位置づけられています。
そして知的障害とは次の3点で定義づけられるのです。
・知能検査によって確認できるIQ(知能指数)が70以下であること
・日常生活や社会生活への適応能力が低いこと
・発達期である18才以下の時点で見られること
2021年に内閣府が発表した「令和3年度 障害者白書」によると在宅の知的障害者は96万2千人おり、2011年と比較して約34万人増加していますが、知的障害への認知度が高まり療育手帳取得者が増加したことが要因だと見られています。
参考:厚生労働省 e-ヘルスネット「知的障害(精神遅滞)」
参考:内閣府「令和3年版 障害者白書」
知的障害の原因
知的障害の原因は3つあるとされているため、それぞれの内容をご紹介します。
生理的要因
知能が低くなる要因となる疾患はないのにたまたま知能指数が75または69以下である場合を指し、遺伝子の組み合わせで偶然誕生するとされますが、多くは合併症を持たず健康状態が良いでしょう。
知的障害を持つ人の大部分を占めます。
病理的要因
疾患・事故などが原因の知的障害のことです。
具体的には次のような疾患や自己が原因となります。
・染色体異常
・自閉症などの先天性疾患
・出産時の酸素不足
・脳の圧迫などの周産期の自己
・生後の高熱の後遺症
脳性麻痺やてんかんなどの脳の器質的障害、心臓病などの内部障害を合併している場合があり、あまり健康状態が良くないことが多いでしょう。
心理・社会的要因
養育者の虐待や愛情・会話不足など、発育環境が原因となる知的障害のことです。
リハビリテーションによって知能が回復するケースもあります。
知的障害の診断
知的障害であるかどうかは、どのような方法で診断されるのでしょうか。
知的障害の診断は、IQ(知能指数)と日常生活への適応能力を総合的に見た上で、18才以下で発症したかどうかも含めて行われます。
日常生活への適応能力とは記憶、言語、読字、数量や時間などの概念を理解する能力である「概念的領域」、対人コミュニケーションなどにおける能力の「社会的領域」、日常生活能力である「実用的領域」の3つですが、適切な行動を取るために1つでも支援が必要であれば適応能力が低い可能性があるとされています。
また重症度はIQと日常生活への適応能力に応じて次の表のように分けられます。
重症度 | IQ | 日常生活への適応能力 | 知的障害の人全体に占める割合 |
---|---|---|---|
ボーダー | 70~85 | ・物事を理解するのに時間がかかる ・言葉の意図や集団の空気を読むのが難しい ・自分が必要な時にしかコミュニケーションを取ろうとしない | 0% |
軽度 | 50~70 | ・支援があれば読字、金銭管理が理解でき買い物や家事ができる ・コミュニケーションはパターン化され未熟である ・記憶や計画、感情のコントロールを苦手とする | 85%程度 |
中等度 | 35~50 | ・読字や金銭管理への理解が小学生レベルのため常に支援を必要とし買い物や家事ができるまでには長い時間がかかる ・単純なコミュニケーションができる ・判断や意志決定は難しく支援を必要とする | 10%程度 |
重度 | 20~35 | ・読字や金銭管理を理解するのは難しく常に支援を必要とする ・全ての日常生活における行動に継続的な支援を必要とする ・身振りや単語、語句を用いた単純なコミュニケーションができる | 3%~4%程度 |
最重度 | ~20 | ・全ての日常生活における行動に対して他者の支援がないと難しい ・身振りや単語、語句を用いた単純なコミュニケーションが難しい | 1%~2%程度 |
ボーダーの人は知的障害とは認定されないため学校では健常者のクラスでは勉強についていけず、障がい
者のクラスでは時間を持て余してしまうなど居場所を見つけにくく、支援の手が届きにくいのが特徴と言えるでしょう。
また同じ知的障害とはいっても重症度に応じて能力が大きく異なることを覚えておきましょう。
知的障害者への支援
知的障害を持つ人には、どのような支援が行われているのでしょうか。
知的障害の人を支える法律と、それに基づいてどのようなサービスを受けられるのかを表にまとめてみました。
法律の種類 | 支援の対象者 | 支援を受ける方法 | 受けられるサービス |
---|---|---|---|
障害者総合支援法 | ・知的障害者福祉法における知的障害者で18歳以上の人 | ・1~6までの障害者支援区分に応じて支援が受けられる | ①自立支援給付 ・障害福祉サービス ・相談支援事業 ・自立支援医療制度 ・補装具 ②地域生活支援事業 ・市町村事業 ・都道府県事 |
知的障害福祉法 | ・知的機能の遅滞がある(IQ70以下) ・生活上の適応機能に制限がある ・概ね18才未満で現れる | ・地域の障害福祉相談窓口に相談し、知的障害の判定を受けて療育手帳を申請する | ①税制上の優遇 ②各種割引制度による支援 ③保育・教育による支援 ④就労支援 ⑤医療支援 |
詳細な支援内容について知りたい人は、地域の障害福祉相談窓口に問い合わせをしてみましょう。
参考:厚生労働省「障害者総合支援法が施行されました」
参考:e-Gov法令検索「知的障害者福祉法」
まとめ
知的障害はIQ(知能指数)と日常生活への適応能力を総合的に見た上で、18才以下で発症したかどうかも含めて診断され、障害者総合支援法と知的障害者福祉法に基づいてさまざまな支援を受けることができます。
この記事も参考にして、知的障害を持つ人への理解をさらに深めてみてください。