ADHDについて調べていたらADDという言葉も出てきたので、意味の違いを知りたいけれどあまりよくわからず困っている人はいませんか?
この記事ではADDとADHDの違いを診断基準から詳しく解説します。
ADDとは?
ADDとは注意欠陥障がいのことで、精神障害の診断基準を示すためにアメリカ精神医学会によって1980年に出版された書籍「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)」の第3版であるDSM-Ⅲに初めて登場した疾患名です。
Attentin Deficit Disorder with and without Hyperactivityの頭文字を取って名付けられました。
DSM-Ⅲでは原因不明なため検査方法がない精神疾患に対し診断の信頼性を向上させるため、明確な診断基準を初めて設けたことで知られていますが、そこで「注意の持続と衝動性の制御の欠陥」が診断基準となったのがADDです。
その後1987年に改訂されたDSM-Ⅲ-Rでは「不注意」「多動」「衝動性」の3つが診断基準となったため、疾患名もADHDと改められました。
一方世界保健機関(WHO)の医療分類リストである「国際疾病統計分類(ICD)」では1990年にICD-10へと改訂されるまでADDが疾患名として用いられていたため、ADDは1990年になるまでは診断名として使用されていたことになります。
ADHDとは?
ADHDとは注意欠陥多動性障がいのことで、DSM-Ⅳに初めて登場した疾患名です。
2013年より使用されているDSM-5の診断基準においては、次の項目を全て満たすことで診断されます。
- 不注意や多動性と衝動性の症状があり、6ヶ月以上に渡って継続している
- 不注意や多動性と衝動性の症状は12才以前から見受けられた
- 不注意や多動性と衝動性の症状が2つ以上の環境(家庭・職場など)で存在し障害となっている
- 症状によって日常生活・職場・学校などで困難がある
- 統合失調症や他の精神障害の経過で症状が生じたのではなく、それらで説明できない
このうち1つめの「不注意」と「多動」については症状が9種類に定義づけられ、17才以上では5つ以上当てはまる必要があるのです。
DSM-ⅣまではADHDを不注意優勢型、多動衝動性優勢型、混合型に分類し以前までのADDを不注意優勢型として診断してきましたが、DSM-5では廃止されています。
参考:厚生労働省e-ヘルスネット「ADHD(注意欠陥・多動症)の診断と治療」
不注意によって引き起こされる症状への対処方法
ADHDの不注意によって引き起こされる症状には、どのような対処方法があるのでしょうか。
3つご紹介します。
ソーシャルスキルトレーニング
ソーシャルスキルトレーニングとは社会生活を円滑に送る上で必要な技能を身に着けるための訓練を指し、英語のSocial Skills Trainingの頭文字を取って「SST」と呼ばれることもあります。
ディスカッションやロールプレイングを通じて適切な行動の仕方を学ぶことができるので、例えばADHDの人が不注意による薬の飲み忘れに困っているとしたら、どうすれば医師の指示通りに薬を飲めるのかを実践的に学ぶことができるでしょう。
ペアレントトレーニング
ペアレントトレーニングとはADHD、知的障がい、自閉スペクトラム症などの子供を持つ家族を対象に、子育てに関する不安や困りごとを解消するために行われるトレーニングのことです。
ペアレントトレーニングにおいては、まず講義やワークショップ形式などで障がいや事例について学び、講義内容を家族でホームワークとして実践してみます。
その後次回の講義で実践から見えてきた課題や感想をグループで共有するというサイクルでトレーニングが進むのです。
ADHDの子供本人だけではなく、家族も巻き込んで不注意に対処する方法を身に着けられるのが特徴的だと言えるでしょう。
ペアレントトレーニングは発達障がい者支援センター、教育センター、病院、NPO法人などさまざまな場所で実践されているため、本人に合った場所を探して受けてみることをおすすめします。
薬物療法
ADHDの不注意によって引き起こされる症状には、病院で受診し薬物療法で対処する場合もあります。
ADHDの不注意の症状を抑えるために処方される薬は次の3つです。
特性の種類 | 薬の種類 | 薬名 |
---|---|---|
不注意 | 中枢神経刺激薬 | メチルフェニデート(コンサータ) |
ADHDの特性全体 | SNRI | アトモキセチン(ストラテラ) |
不注意・衝動性 | 中枢神経刺激薬 | リスデキサンフェタミン(ビバンセ) |
どのような薬が処方された際も同じですが薬の効きを適切に発揮できるようにするために、医師の指示したタイミングを守りコップ1杯の水を用いて飲むようにすることが大切です。
また自己判断で薬を止めたり、効果がすぐに出ないからと勝手に量を増やしたりといったことも止めましょう。
まとめ
ADDとは注意欠陥障がいのことで、DSM-Ⅲに初めて登場した疾患名ですが、「注意の持続と衝動性の制御の欠陥」が診断基準となっていました。
その後DSM-Ⅲ-Rでは「不注意」「多動」「衝動性」の3つが診断基準となったため、疾患名もADHDと改められたという経緯があります。
この記事も参考に、ADDとADHDへの理解をさらに進めていってください。